SAVE LIVE MUSIC 4 “HIROMI THE PIANO QUINTET” ~Back at the Club~

2022年1月2日に上原ひろみを聴きにブルーノート東京へ行ってきました。実は2021年も1月2日にブルーノート東京へ行きました。その時も今回同様、上原ひろみザ・ピアノクインテットででタイトルは”SAVE LIVE MUSIC RETURNS”でした。今年のタイトルは “SAVE LIVE MUSIC 4” ~Back at the Club~ です。

ブルーノート東京エントランス

“SAVE LIVE MUSIC”

この”SAVE LIVE MUSIC”という企画は、上原ひろみがコロナ禍に苦しむライブ業界を救うために始まった企画で今回が4回目の公演となります。今まで行われた公演は

  1. Solo x 4プログラム 16日間32公演
  2. ①The Piano Quintet ②上原ひろみX熊谷和徳 ③Solo 19日間36公演
  3. 上原ひろみX矢野顕子 4日間8公演
  4. ①The Piano Quintet ②Solo x 2プログラム 12日間24公演

となっています(これから行われる公演を含む)。2回目の公演の時は緊急事態宣言が発令されたため、公演が延期になったり1日1公演になったりと変則的に行われました。それでもこの約1年でトータル51日100公演という長期公演になっています。さすがデビュー以来世界中を飛び回り、年間100日150公演する人です。さらにこれらの公演全てのチケットがSold Outになるのですから、まさに“SAVE LIVE MUSIC”なのです。

ライブ業界を救うためにと口で言うのは簡単ですが、実際に継続して続けることは大変なことで、気力・体力・企画力・曲作りなどすべてを注がないとできないことだと思います。本人も言っていましたが、長いツアー中には体調がよくなかったり熱があったりすることもあるけれど、今回ばかりは体調不良になったり熱を出してはいけないのでかなりのプレッシャーがあったそうで、毎日検温して熱がないとホッとする日々だったようです。

The Pinan Quintet”

さてこのピアノクインテットですが、昨年のSAVE LIVE MUSIC RETURNS(②)で誕生しました。新しい企画を考えている中で閃いたそうですが、ピアノでロックをする上原ひろみがクラシックの凄腕演奏家と相まみれるわけですから期待しかありません。当然優雅な室内楽のようになるはずもありませんから、どんな化学反応が起こるのかとても楽しみでした。

SAVELIVEMUSIC4告知

とてもクラシカルな曲調で始まりながらも上原ひろみの即興演奏パートになれば、やっぱり上原ひろみだと確信できる演奏になります。そしてそれぞれの弦楽器が重なり合った演奏の上で上原ひろみのピアノが暴れまくります。それに呼応するかのようにヴァイオリンの演奏が激しくなり曲が狂気を帯びてくるように感じるなど、期待していた以上の音楽でした。もちろんクラシカルなフレーズで優雅な雰囲気もありますが。

上原ひろみはバークリー音楽大学を卒業していますが、ジャズピアノを習いに行ったわけではありません。彼女は曲作りを習いに留学し首席で卒業したのです。授業の中でクラシックの曲も作ったそうで、彼女の夢はいつか交響曲を書くこととインタビュー記事を読んだ覚えがあります。そして今回ピアノクインテット用の曲を書くにあたっては、弦楽器をイメージして曲を書いたのだそうです。コンポーザーとしての上原ひろみもすごいんだなとこのライブを見て改めて思いました。

そしてあれから1年がたち、まさかのレコーディングからフジロック参戦、ジャパンツアーを経てのブルーノート東京での凱旋公演です。残念ながらジャパンツアーはメンバーの皆さん多忙なため公演数が例年の半分ぐらいで、私がいけそうな東京近辺の公演が平日のみだったので参戦できませんでした。ですから私のこの凱旋公演にかける意気込みは相当なものでした。

上原ひろみと言えば即興演奏ですから、1年も経過すれば演奏も変わり曲も全く別物になっています。ですから今回も曲がどのくらい熟成したのか楽しみでした。さらにはメンバーが即興演奏とは無縁な弦楽四重奏の方々ですから、彼らがどれくらい上原ひろみワールドに染まっているのかという事も興味がありました。

実際に見てみた感想は、CDを毎日聴いていて曲自体は覚えてしまっていましたが、ライブで聴いた音楽はとても新鮮な感覚ですぐに引き込まれてしまいました。レコーディングは2021年4月におこなわれたのですが、CDで聴く音楽はまだきれいな音楽と言う感じでした。しかし1年という時間が経過した演奏は、弦楽四重奏の方たちが譜面を見て弾いていながらも上原ひろみとの阿吽の呼吸を感じられるような演奏でした。これはまさに熟成された音楽と言う感じです。

そして上原ひろみから即興演奏と言うお題を出され、1000本ノックのようなしごきを受けたかどうかはわかりませんが(笑)、弦楽四重奏の方たちが楽しそうに即興演奏をされていました。特にRIBERA DEL DUEROと言う曲では、終盤に弦楽四重奏の方たちが一人ずつ立ち上がり(チェロは除く)ステージ中央で即興演奏をするのですが、皆さんソリストのように堂々と楽しそうに観客の表情を見ながら即興演奏していたのがとても素敵でした。皆さん本業のオーケストラでは首席奏者を務める凄腕音楽家ですから、即興演奏に慣れてしまえばそりゃ素晴らしい演奏を聞かせてくれますよね。それぞれの即興演奏が終わるごとに思わず声が上がっていましたし、最後は演奏が終わった瞬間に観客の皆さんは弾かれたように立ち上がり、会場はスタンディングオベーションの嵐でした。

今まで上原ひろみはTrio Projectを中心に活動してきましたが、アンソニー・ジャクソンが病に倒れてからここ数年はソロやほかのアーティストとのデュオなどのフォーマットで活動していました。そんな姿を見ながらいつになったらTrio Projectが再開するのかなどと思っていたのですが、今回のピアノクインテットはTrio Project同様、上原ひろみの音楽活動の柱となるフォーマットのように感じました。弦楽四重奏の方たちは皆さんお忙しいとは思いますが、是非とも第二弾、第三弾とCDを出していただき、コロナが終息したならば、いずれはこのメンバーでワールドツアーに出ることを願っています。

セットリスト

  • 01.SOMEDAY
  • 02.“SILVER LINING SUITE” ISOLATION
  • 03.“SILVER LINING SUITE” THE UNKNOWN
  • 04.“SILVER LINING SUITE” DRIFTERS
  • 05.“SILVER LINING SUITE” FORTITUDE
  • 06.MOONLIGHT SUNSHINE
  • 07.JUMPSTART
  • EN.RIBERA DEL DUERO

そして1月5日の2nd Showがライブストリーミング配信されました。もちろん私も見ました。このフォーマットでは最後の公演という事で、皆さん盛り上がっていましたし、最後の即興演奏パートでは即興演奏以外に楽器で言葉を表現するというお遊びのような究極の即興を披露し、会場は笑いに包まれていましたし何より楽しみながら演奏しているのがすごく伝わりました。クラシックの凄腕演奏家が即興演奏を手に入れると無敵状態になるという事を知りました(笑)。

オリジナルカクテル ザ・サングリアクインテット

オリジナルカクテルの “THE SANGRIA QUINTET”(白ワイン / ラズベリー / オレンジ /アーモンド / アマレット / ソーダ)

いつものようにオリジナルカクテルとコラボレーションメニューを楽しみました。これもいつも楽しみにしている物です。上原ひろみと言えばラーメンと言う事で、メインは”あけましておめで鯛ラーメン SIO”だったのですが、そこまでおなかが空いていなかったので今回はパスしましたが、このラーメンを頼んでいる方がたくさんいました。

ピスタチオのガレット おみくじ付き

デザートはおみくじガレット(ピスタチオのガレット・デ・ロア / マスカルポーネ・アイス / 苺のソース)

今回のSAVE LIVE MUSIC 4 “HIROMI THE PIANO QUINTET” ~Back at the Club~は終わりましたが、まだソロ公演が残っていますし、それも見に行く予定です。

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