上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテット ”シルバー・ライニング・スイート”

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上原ひろみの新しいプロジェクト、「上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテット」のアルバム「シルバー・ライニング・スイート」が2021年9月8日にリリースされました。ここ数年は色々なプレイヤーとのデュオやソロと言う形態で活動してきましたが、今回は上原ひろみ+弦楽四重奏の組み合わせです。

アルバム シルバー・ライニング・スイート

“ザ・ピアノ・クインテット”

この上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテットは2020年の年末から2021年年明けにかけてブルーノート東京で行われた上原ひろみの”Save Live Music Returns”というライブで実現したプロジェクトです。2020年に行われた”Save Live Music”というライブシーンを助けるというライブの第二弾で”Returns”となっています。

上原ひろみが第二弾を企画しているときに、今回の1st Violinの西江さんの顔が浮かんだという事で、連絡を取り実現したそうです。プロジェクト決定後、コロナ禍で時間がたっぷりあったので、このプロジェクトのために曲を書き下ろしたそうです。ピアノは鍵盤をたたいた瞬間に音量マックスになり音が消えていきますが、弦楽器は次第に大きくしたり音を伸ばすことも出来るので、ピアノとは正反対の特徴があります。ですから上原ひろみは今回は弦楽器を意識して曲を書いたそうです。

そしてこの上原ひろみザ・ピアノ・クインテットのメンバーは

  • 上原ひろみ:piano
  • 西江辰郎:1st violin(新日本フィルハーモニー、コンサートマスター)
  • ビルマン聡平:2nd violin(新日本フィルハーモニー、主席2ndバイオリン奏者)
  • 中 恵菜:viola(新日本フィルハーモニー、主席ヴィオラ奏者)
  • 向井 航:cello(関西フィルハーモニー、主席チェロ奏者)

と言った実力者たちです。

アルバム”シルバー・ライニング・スイート”

上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテット ”Silver Lining Suite”には以下の9曲が収録されています。普段クラシック界を舞台としている演奏家たちも、今回即興演奏に挑戦したようですのでそれもまた楽しみですね。

  1.  シルヴァー・ライニング・スイート:アイソレーション
  2.  シルヴァー・ライニング・スイート:ジ・アンノウン
  3.  シルヴァー・ライニング・スイート:ドリフターズ
  4.  シルヴァー・ライニング・スイート:フォーティチュード
  5.  アンサーテンティ
  6.  サムデイ
  7.  ジャンプスタート
  8.  11:49PM
  9.  リベラ・デル・ドゥエロ

①~④は4曲からなる組曲「シルバー・ライニング・スイート」です。この世界中に広がった新型コロナウィルスに翻弄される人々の気持ちを描いたようです。②で人々が不安になり混乱している様子が表現されていますし、③では途方に暮れているようです。そして④ではこの混乱に強く向かっていく決意が現れているように感じます。

⑤はこのアルバム唯一のピアノソロ曲になります。

そして⑧は上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト名義で2012年にリリースされた”MOVE”の中から最終曲の11:49PMが弦楽アレンジで収録されています。MOVEというアルバムは人の一日の心の動きをテーマにしたアルバムで、この11:49PMという曲自体が11分あるので、演奏が終わるとちょうど12::00になり一日が終わるという設定になっています。12:00になり日付が変わりやがて朝が来るという事ですから、今このコロナ禍で出口が見えない中、「明けない夜はない」と言う意味もあるんですよね。

私はこのアルバムの中でこの11:49PMが一番好きで、今でもよく聞いています。MOVE JAPAN TOURのDVDの中の演奏が最高で、プログレのような壮大な曲なのですが、とてもロックな曲が弦楽アレンジでは見事にクラシカルな曲になっています。上原ひろみ本人もこの曲は「弦楽器で聴いてみたかった」とインタビューで語っていましたが、本当に素晴らしい曲です。

⑨のリベラ・デル・ドゥエロはライブで盛り上がること間違いない曲で、1月のブルーノート東京で行われたライブでも最後に演奏され、終わった瞬間に全員が弾かれたように立ち上がり拍手と言うスタンディングオベーションでした。私は立てないのでその場で拍手してましたが・・・。もしコロナでなければ大歓声が沸き起こることは間違いない曲と演奏です。先日のフジロックでも最後思わず歓声が沸き起こっていましたが、それほど引き込まれ盛り上がる演奏です。間違いなく聞いていた人は全員笑顔になります。

そして上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテット 「シルバー・ライニング・スイート」の初回限定盤には2020年にブルーノート東京で行われたライブ、”Save Live Music -Ballads-”でのライブ録音のCDがついています。

2020年にブルーノート東京で行われた”Save Live Music”には4つのプログラムがあったのですが、私はこの公演を見に行く事が出来なかったので、このCDも魅力です。上原ひろみと言えば即興演奏ですから、ライブでの同じ演奏と言う物が存在しないのでライブ音源はとても貴重です。そのライブCDが初回特典としてついているとはなんて素敵なんでしょう。

  1. サムウェア
  2. ウェイク・アップ・アンド・ドリーム
  3. ホワイトアウト
  4. ファイヤーフライ
  5. 月と太陽
  6. ベートーヴェン ピアノソナタ第8番「悲愴」第2楽章
  7. グリーン・ティー・ファーム
  8. セピア・エフェクト

*2020年9月、ブルーノート東京にてライヴ録音

よく、「上原ひろみのアルバムを買ってみたらロックでびっくりした」、とか「思っていたのと違った」と言う声を聞くことがありますが、彼女のソロアルバムでさえイージーリスニングのような曲ではありませんから、そういった静かなピアノソロ曲を聴きたいという方にこの特典CDはオススメです。

恒例のジャパンツアー

さて、この上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテットのライブですが、2021年8月22日にFuji Rock Festival ’21に出演しました。そして10月7・8日にNew York のSony Hallでライブが行われ、11月から12月にかけて恒例のジャパンツアーが行われます。

毎回上原ひろみのジャパンツアーは東京公演など関東中心で2~3公演を見に行っているのですが、今回は残念なことに東京公演は平日のみとなっており、参戦する事が出来ません。関東近郊の土日公演と言うと静岡県浜松市での公演だけになります。ちょいと車を飛ばしていくことも出来るのですが、今のこのご時世では県をまたいで見に行くというのもどうかと思いますので、今年は諦めることになりそうです。最終公演が12月28日ですから可能性は低いと思いますが、万が一追加公演でもあれば何が何でも行こうと思っています。

演奏を聴けないのは残念なのですが、今年の初めにブルーノート東京で聴きましたからまだ諦めもつきます。でも、何度も言いますが上原ひろみと言えば即興演奏ですから、あれから約1年たって曲がどのように成長したのか聴いてみたかったですね。

上原ひろみのジャパンツアーは1ヶ月で約20公演と言うサラリーマン並みの稼働率で有名ですが、今回はその約半分と少なくなっています。それは弦楽四重奏の皆さんにはそれぞれ所属している本業のオーケストラでの活動があるわけですから、公演数が少なくなっているのも仕方のないことですよね。

上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテット「JAPAN TOUR 2021 “SILVER LINING SUITE”」のスケジュールは以下の通りです。

11月11日(木) 松本:まつもと市民芸術館
11月12日(金) 名古屋:愛知県芸術劇場 コンサートホール
11月14日(日) 大阪:ザ・シンフォニーホール
11月23日(火・祝) 広島:広島国際会議場 フェニックスホール
12月04日(土) 札幌:カナモトホール(札幌市民ホール)
12月07日(火) 大阪:ザ・シンフォニーホール
12月08日(水) 福岡:福岡国際会議場 メインホール
12月09日(木) 東京:Bunkamuraオーチャードホール
12月12日(日) 浜松:アクトシティ浜松 大ホール
12月24日(金) 仙台:日立システムズホール仙台 コンサートホール
12月27日(月) 東京:Bunkamuraオーチャードホール
12月28日(火) 東京:Bunkamuraオーチャードホール

私は見に行く事が出来ませんが、運よく見に行ける方、存分に楽しんできてください。そしてまだこのアルバムを聴いたことのない方、是非とも聴いてみてください。

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